健康住宅

 私も、そうした体験をするまでは、どこまで「木の効果」があるものなのか、正直言ってよく分かっていなかった。「木は良い」ということは、感覚的には理解していても、実感がないまま設計の打ち合わせの回数を重ねていたのが実際のところだ。

我が家では家の設計、施工の業者を選ぶ際、幾つかの業者に自分たちが希望する家の絵図面を渡してみた。雑誌の切抜きや、素人仕事で書いた間取り図などを張り合わせ、稚拙な資料を作った上で数社に概算の見積を依頼したのだ。その後、各社と打ち合わせてゆくなかで唯一肥田氏だけが、最後までその資料をたたき台にして根気よく付き合ってくれた。肥田氏の私たちに対する「このプランを、何とかして実現させてあげたい。」という気持ちがありがたかった。

そして、最後は打ち合わせの中で築いた信頼関係を頼りに、建築予算と理想の我が家とのバランスを取りながら、肥田氏の推奨する仕様である「木」をたくさん使った家を実現したのだ。

そうした体験のなかで、幾つか気が付いたことがある。何社かの建築業者と打ち合わせをしてみて、まず思ったのは、「どの業者も最終的に、自社で決めた基本プランの仕様に近づけようとする。」ということだ。

多くの場合「注文住宅」とは言うものの、一から家を立ち上げようとしてくれない。業者が持っている幾つかの基本設計に手を加える「アレンジ住宅」がほとんどで、それでも基本代金に結構高いアレンジ代金が乗り、とても予算が追いつかないことが多かった。

そして、もうひとつ感じたのは広告やモデルハウスなど、業者の打ち出すイメージ戦略に惑わされる危険があるということだ。どの業界でも同じことが言えるが、企業の宣伝の上手さと、業界先導の行政基準に消費者は翻ろうされることが多い。

 そのひとつの例えが、「健康住宅」という言葉だ。私は、「健康住宅」という言葉の本来の意味をこの家で暮らすまで、違って理解していた。住宅メーカーのカタログや広告などから受けていた健康住宅のイメージは、「(低フォルムアルデヒドなどに代表される)健康を害さない⇒健康な住宅」というものだった。その基準として、素人には難解な数字と指標を目にしたこともあった。しかし、半年間この家に住んだ実感として、「健康住宅=そこに住む人が、心も身体も健康になる住宅」が、本当の健康住宅だと理解した。「食事が美味しく、良く眠れて気分が良い家」で、家族が皆元気になる住宅は、間違いなく健康住宅だろう。
 昔ながらの建築工法を用いて、決して高価ではないがしっかりとした材料を技術のある職人さんたちが家の形に作り上げてゆく。今思えば、そうした現場に立ち会えたことだけでも、私にとって良い経験だった。更に言えば、多くの住宅が企業論理優先で画一的になっている昨今において、じっくり、実直につくられた家に住まえることはとても恵まれていることだとしみじみ思う。これから先も、こうした充実感のある住まいづくりを、多くの人が、経験する機会に恵まれることを切に願う。
D.S様(つくば市)より  2004.5.5